1、女性の方が長生きですが・・
世界的に見ても女性の方が長生きですが、日本でも女性が男性より平均寿命で見てもかなり長く生きます。
女性の方が長生きをするだろうという事で、夫の遺言のみを作成する方もいますが夫婦の場合は必ずしも女性の方が長生きするとは限りません。
もし夫の遺言を作成して妻が先に亡くなったら遺言書は無効になります。
せっかく作った遺言が無駄になるだけでなく、夫は妻の相続人との遺産分割協議をする事になります。
夫の方が先に亡くなった場合で子供がいない夫婦は夫が亡くなる頃には父母は亡くなっている事も多いでしょうから妻と夫の兄弟姉妹が法定相続人となります。
この時の妻の法定相続分は4分の3で兄弟姉妹の法定相続分は4分の1となります。
相続財産が自宅である土地・建物の不動産のみである場合に、遺言書がないと兄弟姉妹から「自宅を売って4分の1の相続財産をもらいたい」と言われたら売却せざるを得ません。
実際この様なケースは多くあり、妻は住み慣れた自宅を出ていく事になります。
しかし、遺言書で「妻に全財産を相続させる」としていれば兄弟姉妹に「遺留分」はありませんから自宅を売却することなく済み続けることが出来ます。
兄弟姉妹の法定相続分の4分の1をなくすことが出来るのです。
遺留分とは、法定相続人に保障された最低限の財産の事を言います。
2、夫婦相互遺言
「じゃあ二人とも遺言を作っておこう」と考えますが、同じ遺言書に複数の者が遺言をする「共同遺言」は禁止されています。
遺言書は作成した人の最終意思を尊重する為に、いつでも自由に撤回する事が認められています。
しかし、共同遺言を認めてしまうと共同で撤回をする事になるので各自の自由な意思での撤回が不可能になります。
この為に、どんなに仲のいい夫婦でも共同遺言をする事は出来ないのです。
ではどうするのかと言う事になりますが、「夫婦相互遺言」を作成すると言う方法があります。
別々の用紙に「私が先に亡くなったら、あなたにすべて相続させます」と言う内容の遺言書をする事になります。
初めの例の様に子供のいない夫婦で夫が先になくなり遺言がない場合には自宅を夫の名義から妻の名義に変更するのに兄弟姉妹の印鑑が必要となります。
ですが、遺言ですべての財産を相続させるとしていれば印鑑は必要なく遺産分割協議を行わずに不動産を妻のものにすることが出来るのです。
子供がいない夫婦におススメなのはこの為です。
それぞれの遺言を別々に作成するので手間がかかりますが、長年連れ添った相手が自分の兄弟姉妹と争う事になるかもしれない場合を考えると検討する価値はあると思います。
また、せっかく作成するのであればよりトラブルにならない様に自筆証書遺言ではなく「公正証書遺言」にする方がより確実に記載内容を実現できます。