1、遺言代用信託のメリット
遺言代用信託と言うものがあります。
信託銀行等に財産を預け管理・運用してもらう信託契約の事で、生前から財産の分配方法を決めておく事が出来ます。
そして契約者本人が亡くなるとすぐに相続人に財産を引き継いでもらう事でトラブルの発生を最小限にすることが可能です。
信託銀行などに財産を運用してもらうので本人が生存している間は配当金を受け、亡くなると信託財産を引き継いでもらう事になります。
通常は葬儀費用などの出費がかさんでも相続が終わるまでの数か月間は亡くなった方の銀行口座は凍結されます。
しかし、遺言代用信託で管理・運用されている財産はあらかじめ相続人を指定しておけばすぐにお金を受け取る事が出来ます。
この様にお金を受け取る人を決めておくことで、無用な争いを避け安心して終活をおこなえます。
また遺言代用信託では財産を受け取った相続人(子)が亡くなった時の遺産の分配方法まで決めておけます。
被相続人の財産をどのように分配するのかは遺言書でも行う事が出来ますが、孫への分配の仕方を定めるには子が遺言を作成する事になります。
孫へご自分の財産を確実に承継させたいというケースにも遺言代用信託を使えます。
一度にお金を渡してしまうと使い切ってしまうのではないかと心配な時には毎月一定額を渡すという事も可能です。
遺言代用信託は投資信託などとは違い元本が保証されており、200万円以上の預け入れであれば手数料は無料です。
2、デメリット
遺言代用信託のデメリットとして非課税限度額がないという事があります。
例えば生命保険であれば500万円×相続人の人数までは相続税がかかりません。
しかし、遺言代用信託ではこのような制度はない為に税金対策など検討しているのであれば別の制度も考える必要があります。
また遺留分減殺請求権の対象になります。
遺留分減殺請求権とは、遺留分を侵害されている相続人が遺留分を侵害している受遺者や受贈者に侵害額の返還を求める事です。
※遺留分とは相続人が必ずもらえる財産
※受遺者とは遺言による贈与(遺贈)により相続財産を譲り受ける人
※受贈者とは贈与(プレゼント)を受けた人
せっかくのトラブルを回避するための制度なので遺留分を侵害する事がない内容にしておくことをお勧めします。
原則として遺言代用信託は現金が対象となるので不動産や株式などで行う事はできません。
ですが、中には不動産の「土地信託」や「不動産管理信託」と言うサービスを行っている所もあります。
3、遺言信託、遺言との違い
遺言代用信託は,信託契約に遺言の機能を持たせて遺言の代わりにするので「代用」と言う事になります。
契約者が生存しているときから信託契約を発動させ、財産管理を行い亡くなった後も相続人を指定して信託による財産管理を継続していくものです。
これに対して遺言信託は遺言の作成やアドバイス、遺言書の保管、執行をパッケージ化した信託銀行のサービスで遺言と特に違うことが出来る訳ではありません。
つまり遺言者の死後に初めて効力を持つものです。
遺言執行者である信託銀行などが遺産分割などを行い、遺言の執行が終了すればそこで終わりとなります。
遺言者の生前から資産を運用し死後は相続人などが引き継ぐ遺言代用信託の目的は、資産を運用して安全に管理して家族に引き継ぐ事。
遺言信託の目的は、不備のない遺言を作成して保管する事。
遺言内容通りの遺産分割を確実に行う事にあります。
遺言書との違いですが、遺言ではどの財産を誰に相続させるのかまでを決める事となります。
遺言代用信託では財産の使い道や相続の条件、孫の代まで誰に相続させるのかを指定できます。